邑南町の春の贅沢
邑南町に来て、初めての春。
白一色だった景色に、少しずつ色が戻り、さまざまな植物が元気に顔を出しています。
邑南町に来て、「春って、こんなに幸せな季節だったんだな」と、うれしく思う日々です。
■ 邑南町の豊かな山の恵み
先日、近所のおばあちゃんに誘っていただいて、山に入りました。
つくし、こごみ、せり、のびる、みつば、ぎぼし… 初めて見る山菜がたくさん。
山菜って、こんな風に生えているんだとびっくりしました(笑)
「このへんにこごみが出るのよ」「これはおにしめに」「これはまだ小さいね」「これは胡麻和えにするとおいしいよ」
歩きながら次々に教えてくれるおばあちゃん。足元には宝物のような春の恵みが広がっていました。
三つ葉
こごみ
山菜のほろ苦さには、冬の間にたまったものをすっきり流す力があると聞きました。
自然と共にある暮らし、そして昔ながらの知恵。そのどれもが、私にとって何よりの贅沢でした。
■ 春の訪れをつげる、つくしの秘密
つくし
スギナ
歩いていると、にょきにょきと顔を出したつくしが、まるで背比べをしているように並んでいました。
その近くには、朝露をまとってきらきら光るスギナの姿も。
つくしとスギナは、同じ地下茎から出てくる兄弟のような存在だと知り驚きました!
その日は、つくしをたくさん摘ませてもらい、家に帰ってから、夜な夜なはかま取りに励みました。
すると、手や机の上が緑色の粉だらけに!
つくしの胞子
最初は「カビみたい!?」と驚きましたが、これはつくしの頭から舞う胞子。
春に命をつなぐための、大切な粒なのだそうです。
食べるときは、胞子がまだ飛んでいない、頭がかたく閉じた茶色っぽいつくしを選ぶのがコツだそう。
根元からやさしく摘んで、はかまを取り、この緑の粉(胞子)も洗い流してから、湯がいてあく抜きをすれば下ごしらえ完了。
ちょっと手間はかかりますが、それもまた春の台所仕事の楽しみ。
天ぷらや卵とじ、佃煮にすれば、春の香りがふわっと広がります!
■ 食と暮らしがつながる場所
邑南町で迎えた春は、これまでで一番、春という季節を五感で感じた時間でした。
暮らしの知恵を惜しみなく分けてくれる、近所のおばあちゃんやおじいちゃんのあたたかさに、いつも心から感謝しています。
そんな日々の一つひとつが、外から来た私にとっては驚きであり、感動であり、そして何よりの贅沢でした。
都会では感じられなかった、春の色、香り、音がここにはたくさんあります。
春は短く、あっという間に過ぎてしまいます。
邑南町を訪れることがあったら、ぜひその時々の自然の恵みを、心とからだで味わってみてください。